2010年8月25日水曜日

JPCF2010開催!!~コンクリート製品に未来はあるか?

 コンクリート製品フォーラム2010は昨年開催された日本コンクリート製品ジャンボリー2009を大幅にスケールアップ。全国コンクリート製品協同組合理事長サミットにおける連合会構想、そして世界のコンクリート製品業界の潮流あるいは日本の国土交通行政の行方をテーマにしたセミナー、さらにはパネルディスカッションや基調講演、新製品・新技術発表会などの企画を通じ、フォーラム参加者ひとりひとりが「コンクリート製品に未来はあるか」について自問自答する場となった。
 恐らくグランドレセプションに集ったおよそ千人の目には、うっすらとかも知れないが確実にコンクリート製品の未来が映ったのではないか。その「未来」をより明確なものにするために、既にJPCF2011が始動を開始した。

 5月26日から28日の3日間にわたり、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールをメイン会場に日本コンクリート製品フォーラム2010(JPCF2010)が開催された。
 フォーラム初日に開催された全国コンクリート製品協同組合理事長サミットでは、出席者全員により全国コンクリート製品協同組合連合会の設立に向けた基本合意がなされた。2日目はフォーラムのメインテーマ「コンクリート製品に未来はあるか」についてパネルディスカッションが行なわれたのに続き、日本コンクリート工学協会会長(当時、現土木学会会長)で岡山大学名誉教授の阪田憲次氏、CPI(Concrete Plant International)編集長の ゲアハルト・クロックナー氏(Gerhard Kloeckner)、衆議院議員で国土交通委員会委員長の川内博史氏という豪華な顔ぶれで講演やセミナーが行なわれた。最終日の新製品・新技術発表会も立見が出るほどの人気で、国内外の最新技術に対する感心の高さを強く印象付けた。


「市場の変化という大きな流れは、そう簡単に変えられるものではない。変えられないものに対してボヤいている暇があるなら、変えられることを変えて行こうじゃないか。業界の現状は長年変えるべきことを変えてこなかったことの結果だ。結果には必ず原因があり、その原因を見つけない限り状況は好転しない。市場の変化に適応していくことが各企業そして業界が生き残る唯一の道ではないか。去年の日本コンクリート製品ジャンボリー2009は懇親の場でしかなかったが、今年は皆で情報交換と討論を行ないオールプレキャストの視点で未来を考え創造する場にしたい」。
 こんな発想から企画された今年のコンクリート製品フォーラム2010。来場者は延べ千人を越える盛況ぶりで、特に2日目に行なわれたセミナーや講演では当初用意した300席が満席となり急遽100席以上増設して対応するするほどの人気となった。またスポンサー企業による展示コーナーではパネル展示の他、会場内に設けられた2つのプレゼンテーションルームで新製品や主力商品のプレゼンテーションが行なわれ、こちらも立見が出るほどの盛況ぶりだった。
 3日目の新製品・新技術発表会でも出足は衰えず、会場に入りきれない人のために発表会の途中でレイアウトを変えて椅子を増設したほど。
 コンクリート製品に未来はあるか? そして、その未来は誰が創るのか? どう創るのか?というコンクリート製品業界共通の課題、そして国内外のコンクリート製品技術に対する感心の高さを印象付ける形となった。
 2日目の夜にはグランドレセプションが催され、開会にあたり挨拶した実行委員の大月隆行氏が「協賛社・後援団体・来賓をはじめ、呼びかけ人・各企業からのサポーターの協力無しにはフォーラムの開催は有り得なかった」と謝辞を述べた上で「私たちの業界は非常に厳しい経営環境の中で日々の業務に取り組み、各地域で奔走している。我々は社会基盤を整備し、安全安心な社会基盤を維持していく責任を課されている。その使命をしっかり受け止めて厳しい中ではあるが、自助共助の精神で共に学んで新しい未来を開拓して行きたい。そして持続可能な社会の実現に貢献して行きたい。共にこの場を活かし、お互いの信頼関係を確認して力を合わせて前進して行こうではないか」とフォーラムに集った仲間に呼びかけた。
 来賓では岡山大学名誉教授の阪田憲次氏、経済産業政務官衆議院議員近藤洋介氏、首都大学東京名誉教授の國府勝郎氏が挨拶した。


 このうち阪田氏はフォーラムの成功を祝した上で、日本のプレキャスト化率が欧米に比べ大きく見劣りしている現状について「いろいろな理由があると思うが、業界がオールジャパンとしてまとまる体制が未だできていないことが大きいのではないか。今回のフォーラムでこれだけのことをやるエネルギーがあるのであれば、是非この機会に皆さんが結束して頑張って欲しい。基調講演で話した通り社会基盤整備を巡る環境は非常に厳しいが、コンクリート製品自体が持つ可能性はまだ十分にあるという気がする。そういうことを強く認識して、各企業単独では無く全国的な規模でまとまり協力してコンクリート製品の特質・特長を活かすような取組みをお願いしたい。本日、会場には多くの大学の先生方が見えているが、そういうことに関しては協力するにやぶさかでないと思う。こういう厳しい時代だからこそ我々は希望を持って頑張りたい」と述べ、業界の結束がプレキャスト化率の向上につながるとの見方を示した。
 さらに近藤氏は「これだけ多くの人々が様々な壁を乗り越えて一堂に会し、業界の課題や将来の夢を語り合うのは素晴らしいことだ。フォーラムを通じて様々な知恵と力が発揮されることを期待する」とフォーラムの成果を称えると共に「鉄であれ化学製品であれコンクリートであれ基礎素材産業は日本の土台であることは間違いない。とりわけコンクリートは長期にわたり使用される素材で、長く使われているがゆえに大変なノウハウの蓄積があるのではないか。経済産業省も国土交通省もこれからは原発・鉄道・水ビジネスなどをシステムとして世界に売り込んで行こうとしているが、日本のコンクリート製品の技術力無くしてこのようなインフラの輸出は実現できない。皆さんの高い技術力をどんどん世界に売ってもらいたいし、国もサポートを行なっていきたい」と述べ、インフラの輸出と並行してコンクリート製品業界が海外に販路を拡大することに期待感を示した。また国内政策では「スマートグリッドという電力需給を自動調整する機能を持ったスマートエネルギーな環境配慮型の新しい街づくりを日本全国で進めたい。コンクリート製品業界を挙げた協力をお願いしたい」と述べた。

 また國府氏は「昨年は辛口の講評をしたが、今年は皆さんの努力により協同組合連合会や業界の未来、世界のコンクリート製品の動向、これからの日本のコンクリート製品業界展望など、昨年のジャンボリーに比べると格段の進歩で参加者も千人と倍増した。フォーラムにこれだけの人が集まったのだから、「未来」はあるに決まっている。元気のある日本を創造し高齢化社会を支えるのはプレキャスト業界であるということを心に命じて欲しい」と業界にエールを送って挨拶を結んだ。
 グランドレセプションでは今回のフォーラムに向けて新たに結成されたザ・コンクリーツ・ジャパンがデビューを飾り、息の合った演奏で会場を盛り上げた。(原稿協力:ブロック通信)